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レイテ海戦の失敗


失敗の本質 日本軍の組織論的研究

失敗の本質―日本軍の組織論的研究失敗の本質―日本軍の組織論的研究
(1984/05)
戸部 良一寺本 義也

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本書を紹介する最後は海での戦いです。ここでも組織としてのいろいろな失敗がありました。

レイテ湾は地図のとおりフィリピンの南側にあり、近くにリゾート地として有名なセブ島などがあります。

レイテ湾地図

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レイテ海戦は、昭和19年10月、つまり敗色濃厚な日本軍がフィリピンのレイテ島に上陸しつつある米軍を撃滅するために行なった起死回生の捨て身の作戦でした。

日本海軍の軍艦63隻、米軍の軍艦170隻が作戦に参加し、世界の海戦史上でも最大級といわれる大規模な海戦が4日間にわたり行なわれました。

日本海軍は部隊を3つに分け、以下のような作戦を立てました。

『①栗田艦隊は、戦艦「大和」「武蔵」を主軸とした水上部隊によって、北方からレイテ湾に突入。
 ②西村艦隊と志摩艦隊は、各々南方から栗田艦隊と同時にレイテ湾突入。
 ③小沢艦隊は、優勢な敵機動部隊を栗田艦隊からそらすために、囮となって北方へ誘い出す。
 ④航空部隊は、それにさきだって、敵空母を攻撃し、レイテ湾突入艦隊に対する敵の攻撃をできるかぎり阻止する[p.138]。』

要するに、戦艦による北側と南側からレイテ湾の米軍上陸部隊への殴り込み作戦と、それを可能にするため相手をひきつける囮(おとり)作戦という2つの作戦からなっています。

日本はフィリピンを取られますと、南方からの資源が日本に入ってこなくなります。その為、あらゆる犠牲を払ってでも死守する必要がありました。

海戦が始まりますと見事に米軍は日本軍の囮部隊の誘いにのってきました。この囮部隊には残りわずかとなった日本海軍の虎の子の空母部隊が含まれていたからです。
当時の戦い方としまして、まず艦隊の中の空母を狙い撃ちし、最初に沈めるのが鉄則です。

作戦通りですと、囮部隊へ米軍の攻撃が集中している隙に戦艦部隊がレイテ湾へ突入するという手筈です。実際、奇跡的にも日本軍のシナリオどおりにコトが進みつつありました。

しかし、その時とんでもないことをやってしまいます。

なぜか、戦艦部隊の栗田長官はレイテ湾を目前にして反転を命じてしまいます。

反転を判断した理由について次のように書いてありました。

『①通信不達のため小沢艦隊の牽制効果もあきらかではなく、自分たちだけが孤立して戦っている。
 ②レイテ湾口には米戦艦部隊が栗田艦隊のレイテ湾突入を予期して遊撃配備をしている。
 ③レイテ湾に突入したとしても、米国の護衛空母や輸送船団は湾外に脱出してカラになっているかもしれない。
 ④北方の近距離にいると見られる敵機動部隊を攻撃して、敵の意表に出られれば有利な戦いができる[p.145]。』

ここで重要な指摘がなされています。

『ここで注意しなければならないのは、こうした状況判断がほとんどすべて誤った情報や、不正確な情報に基づく栗田司令部の想像によっていたという点である[p.145]。』

しかし、実際は各部隊まさに命をかけて獅子奮迅に戦い、日本軍の作戦通りにコトは進んでいました。後にマッカーサーが「勝利はいまや栗田提督のふところに転げこもうとしていた」と回想録に記しています。

結果、日本軍は惨敗し、囮部隊はほとんど撃沈されてしまいました。

                

そもそも勝算のほとんどない厳しい状況で、かつ大変難しい作戦ではありましたが、本書で以下の組織的失敗を上げています。

1.戦略的不適応

この作戦が行なわれる直前に「沖縄空襲」「台湾沖航空戦」があり、当初作戦参加を予定していた航空機の多くを失ったにも関わらず、そのまま変更なく作戦が実行されています。

〝柔軟な対応〟〝硬直した官僚組織〟〝一度決めたらそのまま進み、変更されない〟これも現在の組織でよくあるパターンです。

2.情報・通信システムの不備

各艦隊と囮部隊の通信連絡(無線)が極めて不調で、不正確な情報や誤報にしばしば振り回されました。これら、通信機能の障害が作戦の展開に重要な影響を及ぼす結果となりました。

〝情報の共有〟隣の部署の失敗を知らないで同じ失敗を繰り返す。〝報連相がない〟ので上司は現在の状況がわからない。明らかとなった時には手遅れ・・・・・と言った感じでしょうか。

3.高度の平凡性の欠如

本書では「高度の平凡性」という言葉を用いて説明しています。〝事実を認識して、決められたこと、確実にやりとげる〟という意味でしょうか。こういうことが現場で徹底されていませんでしたし、それを作戦司令部でもそれを徹底させることができませんでした。

『作戦目的と自己の任務の理解は、きわめて平凡かつ基本的な作戦実行の前提であったが、これが実際には十分になされなかったのである[p.153]。』

〝徹底〟できない組織。やると決めたことが、〝なあなあ〟で終わる組織。これもまた会社でもよくあることです。


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