本書によるコロナウイルス予言
感染症の世界史
本書は平成30年1月25日に初版が発行され、令和2年4月20日に9版が発行されています。要するに、昨今のコロナウイルスの大流行前に書かれた本ですが、以下の予言のような文章がありました。
『近年の流行は香港亜型とソ連亜型が出現してから30年以上経過しており、過去の流行史からすると、そろそろ強烈な「新型ウイルス」が誕生しても不思議ではない。ウイルスの変異のスピードが当初の予想よりはるかに速いことを考えると、どこかに潜んで人に致命的な姿に変身できる日をうかがっているのかもしれない[p.204]。』

香港亜型とソ連亜型というのは「鳥インフルエンザ」のこと。
そして今、「新型コロナウイルス」、そのとおりのことが起こっています。


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ハシカワクチン後進国ニッポン
感染症の世界史
以下、興味深い箇所を書き記しておきます。
◆病気の症状は防御反応
「発熱」は微生物を「熱死」させるか、自分が「衰弱死」するかの我慢くらべ。「せき」「吐き気」「下痢」は病原体を体外に排出する生理反応、「痛み」「不安」は病気の危険信号。安易に「吐き気止め」「下痢止め」の薬を飲むのは良くない場合もあります。
◆「正露丸」の由来
日露戦争での戦死者の半数は戦病死。チフスなどの消化器感染症も多く、その予防のために陸軍が開発した薬が「クレオソート丸」。露(ロシア)を制する丸(薬)の意味で、もともと「征露丸」という名称でしたが今では「正露丸」へと名前を変えて現在でも使われているのはご周知のとおりです。なかなか衝撃的な製品名でした。
ご参考までに、本書では歴史上、戦争で死亡した兵士の3分の1から半数は病死だったと推定されています。

◆日本はハシカの輸出国?
衛生、医療の先進国でもあります日本ですが、ハシカに関してはワクチン接種率が低い「後進国」というレッテルをはられています。実際、2007年だけでカナダ、アメリカ、オーストラリア、台湾などに日本からハシカが「輸出」され、現地で抗議運動が起こったりしました。あわせて2014年にはポーランド、ルーマニアとともに日本は「風疹流行ワースト3」とWHOより名指しされています。


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畜産や養殖における多剤耐性の問題
感染症の世界史
通常、抗生物質によってほとんどの細菌は死滅しますが、耐性を獲得したものが生き残って増殖を開始し、さらにそれらをたたく抗生物質が開発され、さらに生き残りが増殖するという「多剤耐性菌」の問題があります。
畜産や養殖の現場でも抗生物質が多用され、多剤耐性菌を作り出しています。
鳥、豚、魚など(本書では牛は書かれていません)の養殖現場では生産効率を高めるために過密状態で飼われます。そんな中で病気が発生すると甚大な被害がでてしまいます。そこで予防のために、抗生物質や抗ウイルス剤、そして成長を早めるために成長促進作用の薬剤が与えられます。
『WHOは、1997年に抗生物質の飼料添加の禁止を勧告、2000年には家畜用の抗生物質をすべて使用禁止にするよう勧告を出した。EUはこれを受けて禁止したが、日本や米国、中国などは、抗生物質の飼料添加を依然として続けている[p.65]。』
私たちが日ごろスーパーで買える肉はだいたいこれらの国々のものです。
本書によりますと国内の飼料への抗生物質と抗菌剤の使用量は年間175トン、人への医療に使われる量が517トンですので約三割に相当します。

追記 生物は自分自身を進化させていくために役立つのがウイルス。感染したウイルスの遺伝子を自らの遺伝子に取り込むことで、突然変異を起こして遺伝情報を多様にしてきたと考えられています。
また、ウイルスが哺乳動物の胎児を守っていることも明らかになってきていて、単なるやっかいな存在ではありません。
また、ウイルスが哺乳動物の胎児を守っていることも明らかになってきていて、単なるやっかいな存在ではありません。


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感染症について学ぶ
感染症の世界史
こういう時だからこそ読みたい一冊。
「微生物と宿主の戦い」「人類の移動と病気の拡散」「人体の防御反応」「感染症を蔓延させた戦争」など、興味深い感染症の歴史、そして個別の感染症「エボラ出血熱」「デング熱」「ピロリ菌」「マラリア」「インフルエンザ」「エイズ」などについても紹介されています。
本書では2014年に西アフリカから始まったエボラ出血熱は最強の感染症であるとしています。
感染力はきわめて強く、内臓が溶けて全身から出血し死に至り、助かったとしても失明、失聴、脳障害などの重い後遺症が残ることが多いとされています。
1976年に東アフリカのスーダン(現南スーダン)のンザラというところの工場の倉庫番として働いていた男性が39℃の高熱で倒れ、10日後に全身から出血して死亡。市場で食肉として売られていたコウモリを食べたのが原因とみられ、後にエボラ出血熱と診断されました。この男性が「ゼロ号患者」と考えられています。

ウイルスは主に血液、排泄物を通じて感染し、汗や唾液からもウイルスが見つかっています。
エボラ出血熱の流行地帯はコウモリを食用にする習慣があり、直接に感染した可能があるものの、コウモリからゴリラなどの霊長類を介した人への感染ではないかと考えられています。
もともとジャングルの奥深くにいる病原体を持ったコウモリは人との接点が無かったものの、人口増加、森林伐採などで接する可能性が出てくるようになったのが原因だそうです。
エボラ出血熱の治療薬は、今、コロナウイルスに効果が期待されている「アビガン」、本書にもでてきました。ただし効果は不明で、この時は緊急避難として使ったところ症状の改善がみられたのです。
追記 2004年にはロシアのシベリアにある旧ソ連の生物兵器研究所で、女性の科学者が誤ってエボラ出血熱ウイルスの入った注射器を自分の指に刺して死亡する事件があり、旧ソ連が生物兵器として研究していたことが明るみに出たと書かれていました。インターネットで検索しますと2019年にシベリアの生物兵器研究所(同じ研究所かは不明)で爆発事故があったことが書かれています。


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肉を食べよう
医学部の大罪
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■栄養は大切
日本人の寿命が伸びたのは、医学の進歩より、栄養状態が向上したことに理由があるとしています。その中でも最大の理由が、肉を食べるようになったこと。外国と肉の平均摂取量を比較しても、格段に少なく、外国で肉の摂取を減らすことが流行っているからといって、日本人が真似するべきではない。まだまだ、日本人の肉の摂取量は少なすぎと述べています。

カロリーにしても、日本人の平均摂取カロリーは1920キロカロリー、一方で北朝鮮が対外的に発表している数値は1800キロカロリー、限りなく北朝鮮に近づいていることを懸念しています。


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進展しにくい新しい治療法
医学部の大罪
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■実際に新しい治療法はなかなか進んでいない現状を述べています。
『ガンについては、放射線治療は遅れているわ、緩和医療は遅れているわ、免疫学は遅れているわで、とても三人に一人(将来は二人に一人になるとされています)がガンで死ぬ国だとは思えません。その一方で、心臓の専門家、メタボ対策、動脈硬化やコレステロール対策の医者と、そして古いタイプの外科医が威張っているわけですから、もうこれは異様な光景です[p.95]。』
結局、外科医の仕事が減る治療法は広まらないのではないか。もし、海外でガンの特効薬が開発され、外科的手術がいらなくなったとしたら・・・・・。日本のガンの外科医が薬の安全性や副作用を楯に日本での認可を遅らせるかもしれない??と懸念しています。

実際、ある医師が日本に持ち込んだ乳ガンの乳房温存療法は、一五年もの間、無視され続けたことを紹介しています。


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白い巨塔の世界
医学部の大罪
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■医学部にある教授をトップとしたヒエラルキー制度について書かれていました。
『「いったん教授になったら、定年まで居座ることができる」という仕組みが、ガンに限らず、日本の医学の進歩を遅らせる大きな要因となっています[p.78]。』
教授の医療や手術の正当性を覆す新たな方法が自分の医学部で発見されれば困ったことになりますし、そもそもそういう研究成果は同じ医局からは出てきません。
この抜本的な改革としては、医学部の教授を任期制(三年ごとなど)にすることを本書で提案しています。こうすることで本当の能力主義が反映されます。能力があれば長く教授の地位にいることができるのです。


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専門医と総合医
医学部の大罪
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精神科医和田先生の本。大学医学部の代表的な機能として臨床、研究、教育の3つがあります。臨床は患者の治療、研究は病気の原因究明や薬の開発など、教育は将来のお医者さんを育てること。
本書ではそれらを担う医学部に対する問題を提起しています。
和田先生によりますと、それらのいずれもが〝二流〟で、医学や医療の進歩に対する〝抵抗勢力〟にもなっていると述べています。
■平均寿命が一番長い長野県では、老人医療費も一番少ない。
その理由は、総合診療と地域医療が盛んで予防医学に力を入れているから。
大学医学部による専門分化型の医療ではそれぞれの診療科ごとに診療し薬が処方されるので、診療代、薬代などの医療費が増えていくこととなります。例えば高齢者では様々な疾患を抱えているケースもあり、疾患ごとに専門医が治療にあたり医療費が増加してしまうこととなります。
そこで、患者の全体を診る総合医、町医者、かかりつけ医、と呼ばれる医師による地域医療の重要性をあげています。患者の治療は彼らが行い、重症・難病などは大学医学部の専門医が治療にあたる、こういった役割分担が必要なのです。実際、医学部の多い県、つまり、専門医が多い県ほど、平均寿命が短いといった点も本書で指摘されています。

現在は、医師を育てる新臨床研修医制度で総合医としての教育プログラムも導入されるようになり、さらに全国の医学部の競争原理も働くようになった点は評価しています。
日本の医療費は年間三四兆円、年々増加傾向にあります。そのほかに、ドラッグストアなどで購入する薬代、民間の治療機関での医療費などを含めると約四〇兆円。そのうちの四割が薬代です。


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大人の発達障害
発達障害と向き合う
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〝発達障害〟とは「ADHD(注意欠陥多動性障害)」「アスペルがー症候群」「自閉症」「LD(学習障害)」などの一連の症状の総称です。総称となっていることが発達障害をより一層わかりにくくしています。それが原因で「非行」「問題行動」「うつ病」「不安障害」といった様々な合併症を引き起こしているケースも多いと述べられています。
発達障害は子どもだけでなく、もちろん大人にもあります。
『この多くは、発達障害である大人を指しているのではなく、発達障害が話題にもならなかった時代に子ども時代を過ごしてきた、認知に凹凸のある大人のことであると私は理解しています[p.180]。』
本書にある大人の発達障害の特性が以下です。

大人の発達障害の特性
1 二つのことが一度にできない
2 予定の変更ができない
3 スケジュール管理ができない
4 整理整頓ができない
5 興味の偏りが著しい
6 細かなことに著しくこだわる
7 人の気持ちが読めない
8 過敏性をめぐる諸々の問題
9 特定の精神科的疾患
10 クレーマーになる
どなたにも多少は当てはまる部分があることと思います。個人の得意不得意、個人の性格や個性もあり、どこから発達障害とするかは大変難しいところです。治療には本人の自覚と周囲の理解が不可欠です。


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